太陽電池


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高性能の太陽電池

2012年01月20日

少し古い記事だが高性能の新太陽電池なので紹介する。昨年2011年11月5日の朝日新聞サイト記事「太陽光→電気の変換効率アップ シャープの化合物型(太陽)電池」から。

シャープは4日、研究中の化合物型太陽電池で、光から電気への変換効率36.9%を達成したと発表した。レンズや鏡で光を集めるタイプを除くと、同社が2009年に出した35.8%を更新して、世界最高の変換効率という。14~15年をめどに、人工衛星向けなどに実用化する計画だ。

化合物型は、光を吸収する層に複数の元素を混ぜた材料を使う。一般的なシリコン型に比べて高価だが、効率は高い。シャープは09年と同じ構造の太陽電池で材料を工夫し、効率を高めた。

この太陽電池を集光タイプに応用すると、変換効率は43.2%まで高まる。今後は新たな構造にも挑戦し、25年までに変換効率40%を目指すという。(C)朝日新聞

この新太陽電池は化合物型太陽電池というタイプだ。光を吸収する層に複数の元素を混ぜた材料を使うとのこと。特殊な元素も使うため高価となるが高性能だ。

太陽電池の性能は、変換効率で判断するのが一般的だ。変換効率とは、光のエネルギーの何%が電力エネルギーに変換されたかを表す。例えば市販太陽光パネルで最も高性能な単結晶シリコン型太陽電池はの変換効率は20数%だ。多結晶シリコン型なら20%弱。薄膜シリコンなら10数%、といったところだ。そして今回の新太陽電池の変換効率は、何と、36.9%という驚異的な数字だ。これは世界最高の変換効率、とのことだ。

また、変換効率を物理的に高める方法として、集光型太陽電池にする方法がある。これはレンズで集光し、その焦点に小さな太陽電池を置く方法だ。今回の新太陽電池をこの集光型にすると、変換効率は約43%もの数値になるとのこと。

シャープはさらに性能アップに努め、2025年までに変換効率40%を目指す。これは大変な数字だ。

この高性能の太陽電池は、高価なため民生用にはならない。通常は人工衛星の太陽電池に使用されるようだ。

駅で有機薄膜太陽電池の実験

2012年01月16日

栃木県の下野(しもつけ)新聞サイトの1月16日記事「鶴田駅で太陽電池試験 JR東日本」から一部を引用する。

JR東日本は25日から、宇都宮市西川田町のJR日光線鶴田駅で太陽光発電の新技術として注目される「有機薄膜太陽電池」の実証試験を行う。同社はすでに東京駅、群馬県高崎市の高崎駅などにパネル状のシリコン型太陽電池を設置しているが、有機薄膜太陽電池の設置試験は同社管内で初めて。約1年間にわたり発電効率などを検証し、実用化を目指す。

一般的なシリコン半導体を使った太陽電池と異なり、有機薄膜太陽電池は有機化合物半導体を用いるため低価格の太陽光発電方式として期待されているという。薄く光を通し、軽くて曲げられることが特長だ。反面、太陽光を電力に変える効率(変換効率)が課題とされ、各メーカーや研究機関が開発を競っている。
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試験は改札口とホームを結ぶ通路の屋根に20センチ四方の有機薄膜太陽電池48枚を設置。昼間に太陽電池で発電した電力を事務室内の蓄電池にため、夜間に通路上の発光ダイオード(LED)照明4個(計18ワット)の電力をまかなう。照明は人の有無を感じるセンサーでついたり消えたりする。

試験期間中は利用者にも発電量が分かるよう、待合室にモニターを設置する。(C)下野新聞

有機薄膜太陽電池は未来技術のひとつ。薄いプラスチック膜が太陽電池、と考えるとわかりやすい。まだ変換効率はかなり低いが、今後変換効率が改良されれば高価なシリコンを使用しないため低価格の太陽電池としてかなりのシェアが期待できる太陽電池だ。その未来志向太陽電池を使った実証実験がJR東日本の駅で実施される。

場所は、JR日光線の鶴田駅。その駅ホーム屋根に、かなり小さいが20センチ四方の有機薄膜太陽電池48枚を設置し、それを蓄電池に溜め、夜間のLED照明(計18ワット)に使用する、とのことだ。イメージ図のとおりだ。この図の色が信用できるのなら、この有機薄膜太陽電池は紫色をしている。

小さい上に変換効率が低いため、出力は大変小さいようだ。

通常のシリコン型太陽電池は同社では複数駅に設置済みとのこと。しかし有機薄膜太陽電池は同社では初、とのことだ。

駅のホームの屋根の面積は大変広いので、少しくらい変換効率が低くても駅ホーム全面に設置すればかなりの出力が期待できる。この有機薄膜太陽電池は価格の安さが期待できるので、変換効率よりは価格を優先する、面積の広い設置には大変向いた太陽電池となるだろう。

車の屋根に有機薄膜太陽電池

2011年09月08日

SankeiBizサイトの9月2日付け共同通信記事「世界初の塗料型太陽電池車 独ダイムラーが共同開発」から一部を引用する。

ドイツ自動車大手ダイムラーと化学大手BASFは1日、車体に塗る形で備え付ける「有機太陽電池」を使った電気自動車を共同開発したと発表した。両社によると、同電池を使った自動車は世界初。13日からフランクフルトで始まるモーターショーで公開する。

発表によると、有機太陽電池が採用されるのは小型車「スマート フォービジョン」。車の屋根に透明な有機化学染料を使った。従来の充電型の電気自動車と違い発電が可能なため、長距離走行が可能になった。
...(C)共同

塗る太陽電池、即ち有機薄膜太陽電池については、このブログの直近では8月19日記事「金沢大が開発中の有機薄膜太陽電池」に書いた。その開発中の有機薄膜太陽電池は、コストを下げられる製法なのだが変換効率が2~3%と、かなり低くで実用には遠いものだった。またこのブログの7月20日記事「塗る太陽電池」では、三菱化学が開発した、変換効率10.1%という、薄膜シリコン型に迫る変換効率の有機薄膜太陽電池について書いた。

今日の話題は、その有機薄膜太陽電池がいよいよ実用化され、自動車に搭載される、という話題だ。開発したのは、ドイツのダイムラーとBASF。BASFはドイツの化学大手会社だが、筆者の年代ではカセットテープのメーカーとして記憶に残っている。その両社が開発した有機薄膜太陽電池は透明で、小型車スマートの屋根に塗る、とのことだ。

従来の電気自動車(EV)とは異なり発電しならが走行できるため長距離走行が可能になった、とある。ここで疑問は、車の屋根の面積程度の有機薄膜太陽電池で、「長距離走行が可能になる」ほどの出力が得られるのだろうか。スマートはそうは大きくない車だ。屋根の面積を2平方メートルと仮定し、この有機薄膜太陽電池の能力を結晶型シリコンタイプ太陽電池の半分と仮定したとき、出力は約0.2キロワット弱だ。この出力で「長距離走行が可能になる」だろうか、疑問は残る。

とはいえ、塗料に有機薄膜太陽電池を塗り走行しながらの発電・充電が可能な車の登場は、有機薄膜太陽電池にとって大きな可能性のあることを明示している。

金沢大が開発中の有機薄膜太陽電池

2011年08月19日

金沢市にある北國新聞(ほっこくしんぶん)サイトの8月8日記事「塗る太陽電池実用化へ 金大と被災企業タッグ 」から一部を引用する。

金(沢)大の研究チームが独自の「塗る太陽電池」を開発し、東日本大震災で被災した宮城県の企業と連携して、実用化に向けた研究開発に乗り出した。理工研究域物質化学系の高橋光信教授らの技術で、世界中で開発が進む塗る太陽電池の中でも、大気中で作製できる点や耐久性の高さが特長。次世代エネルギーへの関心が高まる中、「この事業に命運を懸ける」という被災企業の挑戦を後押しする。

塗る太陽電池は「有機薄膜太陽電池」と呼ばれる。金大の研究チームは、宮城県のベンチャー企業「イデアルスター」(仙台市)とガラス・土石製品製造の「倉元製作所」(栗原市)と契約し、実用化に向けた研究開発を進めている。

有機薄膜太陽電池は、多くの太陽電池に使われているシリコンの代わりに有機半導体を用い、溶剤に溶かして基板に塗る。大規模な設備が必要なシリコンと比べて生産コストは約10分の1で、軽く、柔軟性に優れているなどの長所がある。

金大の研究チームはさらに大気中でも性質が安定している材料を使い、「逆型」と呼ばれる構造を採用。従来の製造工程と大きく異なり空気中での作製が可能となった。
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高橋教授によると、この電池が光エネルギーを電気に変換する発電効率は現段階で2~3%で、シリコン系太陽電池の15~20%と比較すると大きく劣る。高橋教授は「柔軟な発想があれば使い道は無限にある。企業の生産技術やアイデアを生かして普及させたい」と話した。(C)北國新聞

この塗る太陽電池、つまり有機薄膜太陽電池の話題だ。金沢大の研究チームが企業と連携して実用化に向けた研究開発を行っている。この有機薄膜太陽電池は通常の太陽電池の原料であるシリコンは使用せず、有機半導体を溶剤に溶かして基板に塗る。この方法が故に生産コストはシリコン型のなんと1/10とのことだ。

これは有機薄膜太陽電池の一般的特徴だが、この金沢大チームの有機薄膜太陽電池の特徴は、製造時に空気中での作成が可能なことだ。ということは、通常の有機薄膜太陽電池は大気とは隔絶された閉じた系で作らなければならないのに対し、さらにコスト減が期待できる、ということになる。

この金沢大チームの有機薄膜太陽電池の最大の欠点は、その発電効率だ。なんと、まだ2~3%とかなり低い。単結晶シリコン型は20%程度、三洋電機のHIT太陽電池は23%なので、その約1割ということだ。これではまだまだ使えない。

有機薄膜太陽電池については、このブログでは7月20日に「塗る太陽電池」記事を書いた。その中で、三菱化学が変換効率10%を超える試作品の作成に成功した、とある。金沢大チーム、実用化といえるには残念ながら多大な性能アップが今後必要だ。

塗る太陽電池

2011年07月20日

朝日新聞サイトの7月19日記事「塗る太陽電池、実用化めど 三菱化学、13年春ごろ発売」から一部を引用する。

ビルの壁や車のボディーで使える「塗る太陽電池」の実用化のめどが立った。従来の太陽光パネルでは置きにくかった場所に塗ることができ、量産もしやすい。2013年春ごろに出回ることになりそうだ。

三菱化学が、光を電気に換える効率が実用レベルの10%を超える試作品づくりに、世界で初めて成功した。従来のガラス板で挟む結晶シリコンではなく、炭素化合物を使う。乾いて固まると「半導体」の役割を果たすようになり、配線を施せば、光に反応して電気を起こす。

煙突や高速道路の屋根など丸みがある物のほか、衣服など曲がる素材に対応できる。通常の太陽光パネルはガラス込みで厚さは数センチ必要だが、この方式だと1ミリ弱で済む。重さも同じ面積なら、結晶シリコン系の10分の1未満に抑えられるという。

塗る太陽電池は、変換効率が課題とされ、世界中で開発が競われてきた。三菱化学は成分や構造を見直し、変換効率10.1%と10%超えに成功。結晶シリコン系の約20%には及ばないが、薄型として市販される膜状シリコン系の太陽電池の水準に追いついた。(C)朝日新聞

三菱化学の話題はこのブログで何回か書いたが、直近では2010年3月18日記事「三菱化学が薄型太陽電池の太陽光発電装置を発売」に書いた。それは、三菱化学の発売する、防水シートと一体になった薄型の太陽光発電装置についてだった。その太陽電池は、同社が以前から開発する有機太陽電池だろうと書いた。その時点での発電効率は通常の太陽光パネルの「3分の1程度」、恐らく変換効率7、8%程度だろう。

今日話題の「塗る太陽電池」も、この有機太陽電池を応用したものだろう。これは、本当にペンキのように塗り、乾くと半導体のようになり、配線すれば太陽電池となる代物だ。塗布層は当然、通常のシリコン結晶系太陽電池よりは非常に薄いため、曲がった面にも自由に対応できる。これは大変な利点だ。印刷技術を使って太陽電池を大量に「印刷」できるからだ。

この「塗る太陽電池」には弱点があった。それは発電効率だ。この太陽電池はなんと10.1%にのぼるのだ。前回記事の時点では7、8%だったので、1年ちょっとでそれが10%になったのだ。発電効率がこの短い期間で約3割増、これは大変な技術的進歩、革新的技術と言える。発電効率が10%を超えれば、通常のさまざまな薄膜型太陽電池とそれほど遜色はない。

以前の記事では、同社はこの有機太陽電池の発電効率をシリコン単結晶型太陽電池と同じ20%まで上げる予定とか。それが実現できたら実にすばらしい。乗用車やトラックの全面に太陽電池を「塗る」時代がそこまで来ている。

CIS薄膜太陽電池の変換効率17.2%を達成

2011年04月06日

朝日新聞サイト3月31日の日刊工業新聞記事「ソーラーフロンティア、薄膜太陽電池サブモジュールの変換効率17.2%」から。

ソーラーフロンティア(東京都港区...)は、30センチメートル角のCIS(銅、インジウム、セレン)薄膜太陽電池サブモジュールの開口部面積でエネルギー効率が17・2%(同社測定値)を達成した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究業務を推進した結果、同社が2010年9月に達成した16・3%の世界最高記録を0・9ポイント上回った。詳細は6月に米国で開かれる「第37回米国電気電子学会太陽光発電専門家会議」で報告する予定。

CIS(銅、インジウム、セレン)薄膜太陽電池は、太陽電池のその他の種類中の項「CIGS薄膜太陽電池」中に、次のように書かれている。

銅・インジウム・ガリウム・セレンの化合物による太陽電池です。数μmの厚さで良いこと、変換効率が高いこと、劣化がないことが特徴で、次世代の太陽電池のひとつと目されています。

ガリウムの量は可変で、それが0%のとき、CIS薄膜太陽電池、と称する。この太陽電池の一つの特徴は、薄膜なので資源の有効利用につながることだ。参考書によれば、3kWのCIGS太陽電池を作成する際、変換効率を15%とすると、必要となる原料(Cu,In,Ga,Seの合計)は約256であるのに対し、同じ出力を結晶シリコンで得ようとすると15kgの材料が必要になる、とのことだ。

このCIS/CIGS薄膜太陽電池は、実験室レベルでは変換効率20%が可能、とされてきた。この変換効率は、実際の太陽光発電の製品レベルでは、いままではソーラーフロンティア社の16.3%だったが、このたび、17.2%を達成した、とのこと。これは世界記録であり、米国学会で発表するそうだ。

このCIS薄膜太陽電池は、日本では昭和シェル石油とホンダソルテックが量産化している。今日話題のソーラーフロンティアは、昭和シェル石油グループの会社だ。このCIS薄膜太陽電池については、ソーラーフロンティア社のCISページに詳しく説明されている。それによると、薄膜タイプでは変換効率が最も高いこと、また影の影響を受けにくいこと、光の吸収スペクトル幅の広いことが特徴だ。

なお今回の記録達成については同社ホームページのソーラーフロンティア厚木リサーチセンターにおいて 世界最高の変換効率を達成に書かれている。

これぞ日本のお得意の技術、と思う。もう安いシリコン系の太陽電池製造は中国に任せ、日本はこのような次世代タイプ太陽電池の開発を急ぐべきだろう。

 
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