スマートグリッド


カテゴリー:スマートグリッド

使用済みニッケル水素電池の再利用

2012年02月25日

SankeiBizサイトの2月17日記事”トヨタ、「プリウス」の廃電池で家屋向け蓄電システム実験”から一部を引用する。

トヨタ自動車は16日、ハイブリッド車(HV)の使用済みバッテリーを利用した定置型蓄電システムの実証実験を始めると発表した。拡大が見込まれる次世代送電網「スマートグリッド」で重視される蓄電機構としての実用化を目指す。

幅100センチ、奥行き80センチ、高さ180センチの定置蓄電装置を開発した。廃車や車検交換で出てきた2代目「プリウス」の使用済のニッケル水素電池を6-7個積む。容量は7キロワット時で、一般家庭の使用電力の約半日分に相当する。
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使用済みバッテリーの定置型蓄電システムは、日産自動車や三菱自動車など電気自動車用で、実験が始まっている。しかし、トヨタのHVでは、昨年が7000基程度だった使用済みユニットが、2010年代後半には数万基の規模で、出回ることになり、電気自動車の使用済みバッテリーよりも大規模で、早い段階での実用化が期待されている。(C)SankeiBiz

次世代の送電網であるスマートグリッドには蓄電池は必須アイテムである。太陽光発電の発電余剰分を蓄電しておき、夜間や周辺電力不足時にその電力を放出する役目だ。その蓄電池は大容量・高機能でなければならず、いまはまだ高価だ。その蓄電池として、ハイブリッド車の使用済みバッテリーを際しようする実験が今日の話題だ。

これはプリウスの使用済みのニッケル水素電池を使用する。その電池を6~7個搭載し、大きさは、幅1m×奥行0.8m×高さ1.8mというから、結構な大きさだ。高さは日本人男性の身長平均より10cm近く高い。この大きな蓄電池群をもってしても、容量は一般家庭半日分の電力とのことだ。もちろん新品のニッケル水素蓄電池ならもっと性能は高いだろうが、安い使用済みニッケル水素電池で価格を安くする作戦だ。記事には書かれていないが、使用済みのものであっても新品の7~8割の性能は残っているはずなので、車ほどには高機能が必要でないスマートグリッド用蓄電池にはこれで充分だろう。

資源を無駄にしない観点からも、良い試みと思う。

次世代電力網の検討会発足

2010年05月29日

朝日新聞サイトの5月28日付の日刊工業新聞記事「経産省、電力網の安定化議論-本格導入へ検討会」から一部を引用する。

経済産業省は27日、再生可能エネルギーやスマートグリッド(次世代電力網)の本格導入に向け、系統(電力網)安定化対策や費用負担の方法を議論する「次世代送配電システム制度検討会」を立ち上げた。スマートグリッドの主要機器であるスマートメーターについて議論する検討会の設置に続くもの。経産省でのスマートグリッドに関する議論は、電力の安定供給をめぐる部分で制度の詳細や具体的な取り決めを詰める段階に入った。

検討会には次世代の送配電システムに関する技術やルールを検討する作業部会と、再生可能エネルギーの全量買い取り制度での費用回収の仕組みを検討する作業部会を6月中に新設。スマートメーター制度検討会との合同開催も予定する。秋と冬に各部会で中間取りまとめをした後、2011年春に報告をまとめる。

検討会の前身である「次世代送配電ネットワーク研究会」では、太陽光発電の出力が消費電力を上回って系統に逆流する「逆潮流」の増大を防ぐため出力の抑制が必要とする意見が多かった。これを受け検討会では、出力抑制機能を付けた機器の開発や系統を運用するルールの見直しなどを議論する。また、双方向通信導入に向けた課題、太陽光発電の出力予測技術や系統用蓄電池の効率化技術開発なども整理。全量買い取り制度に関しても、買い取り費用の回収や系統安定化対策費用の負担のあり方を議論する。 (C)日刊工業新聞社

経済産業省は「次世代送配電システム制度検討会」を27日に設置した。この検討会で検討するテーマの一つが次世代の送配電システムに関する技術やルールの検討だ。この検討会には前身があり「次世代送配電ネットワーク研究会」という名称だった。その前身の研究会では

太陽光発電の出力が消費電力を上回って系統に逆流する「逆潮流」の増大を防ぐため出力の抑制が必要

という意見が多かったので今回の検討会では、出力抑制機能を付けた機器の開発や系統を運用するルールの見直しの検討を行う、とのことだ。

う~~む、ちょっと変だ。この引用記事を読むと「逆潮流」は一見、悪のように思えるが、「逆潮流」とは「売電」とほぼ同義語で、太陽光発電電力が使用電力を上回る分を電力網に送ることなのだ。その売電を阻止する、とまでは言わないが制御する装置・ソフトウェアを開発するのだ。

もちろん、急に過大な電力が各家庭から電力網に流れた場合、電力網にあまり余裕がない「細い」電力網なら変電所がダウンする可能性はある。本当にそれを抑止する目的だけなら良い。しかし本心は太陽光発電のような出力が不安定な電力を送電網に流したくない電力会社がその逆潮流の制御を行うことになると、余計な「制御」まで行う懸念がある。例えば、恣意的に売電額を抑えたいとき、などがある。

このような電力の逆潮流コントローラの重要部分は制御ソフトウェアだ。そのソフトウェアの開発は、電力会社が一切関与できないことが重要だろうし、実際の運用ではそのコントローラは完全自律運転をするものとし、外部(つまり電力会社)からのコントロールは受け付けない形が望ましい。

スマートグリッドとは

2010年05月23日

このブログでもときどき触れているスマートグリッドについてわかりやすい記事を見つけたので紹介する。東京新聞サイトの5月18日記事「スマートグリッド  IT使い効率送電」から一部を引用する。

次世代送電網「スマートグリッド」に注目が集まっている。情報技術(IT)を使い、家庭やオフィスの電力需要と発電側の供給力を瞬時に把握し、効率的な送電を実現する技術だ。

天候に左右される太陽光発電などを大量導入するには、スマートグリッドで電力網を安定させる必要がある。
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普及すれば、地球温暖化対策に貢献する上に、暮らしも便利になる。各家庭には、通信機能を持つ高度な電力測定器「スマートメーター」が設置され、晴れた日には屋根の太陽光発電で生んだ電気を電力会社に売ったり、給湯器で大量にお湯を沸かしたりする。曇りの日や夜は、電気自動車が蓄電池の役目を果たし、家電製品に電気を送る。

電力会社が真夏の昼間の電気料金を高くし、夜間などは抑えたりと細かな料金設定も可能になる。利用者は、安い時間帯に洗濯したり氷を作ったりするよう設定しておけば、自動的に省エネ、節約ができる。外出先で駐車場に車を止めておくと、自動的に充電されたり、反対に電気を売ったりする。電力源には自然エネルギーが多く使われる。

普及には課題も。一台二万~三万円のスマートメーターの設置だけで全国で一兆円以上かかる。電力会社が多額のコストを転嫁すれば電力料金が跳ね上がる可能性もある。(C)東京新聞

スマートグリッドのイメージ図を見ればスマートグリッドの概念が把握できる。そもそもスマートグリッドとは引用記事のとおり、「電力の需要と供給の状況をIT技術により即時判断し最適な送電を実現する技術」と言える。この技術は自然エネルギーによる電力が送電網に大量に流れ込む時代にはどうしても必要になる技術だ。太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーによる電力は出力が不安定である欠点があり、送電網を安定させるための必要に迫られた技術とも言える。

イメージ図によれば、家庭の必須アイテムはスマートメーターとホームサーバー。スマートメーターは通信機能を持つ電気メーターで、電力の制御機能も併せ持つ。このスマートメーターは引用記事によれば1台2万~3万円で、その設置費用が全国で1兆円かかるとの試算だ。この金額は高すぎると私は思う。このスマートメーターの中核はソフトウェアでありハードではない。そのようなソフトウェアは国が開発して電力会社に供与すればよいのだ。この「1台2万~3万円」は電力会社の戦略が垣間見られるような気がする。このスマートメーターは家庭の必須アイテムだが、それよりは重要度は下がるものの必要な機器がホームサーバだ。これは高性能蓄電池と制御ソフトウェアだ。高性能蓄電池は当面はリチウムイオン電池だろう。それにソフトウェアで、家の屋根に設置された太陽光発電の余剰電力を蓄電したり、要求により電力網に蓄電された電力を供給を制御する。

このイメージ図の上方のビルには、ZEBと書いてある。これについてはこの引用記事の最後に解説があった。次のとおりだ。

ZEB

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) 太陽光や地中熱などの再生可能エネルギーの利用や、省エネの徹底により、建物内の電気やガスなどのエネルギー消費量を、正味でほぼゼロにできる建築物。太陽光発電のほか、建物の断熱性を高めたり、自然採光や自然換気ができる構造にしたり、消費電力の少ないサーバーやLED(発光ダイオード)照明を多用することで実現する。経済産業省は2030年までに新築建築物の全体でZEB化を実現する目標を掲げている。(C)東京新聞

このZEBについては、このブログの昨年11月25日記事「2030年、オフィスビルのエネルギー収支はゼロに」と4月19日記事「2020年までに新築住宅の100%を省エネ住宅に」で書いたとおりだ。そのブログ記事を書いた当時はZEBという言葉は無かった。そのエネルギー収支ゼロのビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)と称するのだ。経済産業省は、ビルのみならず一般住宅を含めてすべての新築建築物のZEB化を実現する壮大な目標を掲げている。問題は、以前の記事にも書いたとおり、ZEBを実現するための追加費用の負担だ。やはりこれには国の手厚い補助金が必要と考える。

安価で倍の寿命のリチウムイオン電池

2010年04月07日

朝日新聞サイトの4月5日記事「リチウムイオン電池寿命、倍の10年に 日立が開発」から。

日立製作所は5日、安価なマンガンを電極に使ったリチウムイオン電池の寿命を、10年以上へと、従来の倍に延ばす技術を開発したと発表した。風力発電や太陽光発電の設備や建設機械向けを想定した技術という。

プラス極に使うマンガンの一部をほかの元素に置き換え、達成した。

リチウムイオン電池の性能は、電極の素材に大きく左右される。携帯電話やパソコンでは、高価ながらコバルトが主流となっている。これを資源が豊富で安いマンガンに置き換えられれば、電池の値段を下げられるため、各社が開発競争を続けている。(C)朝日新聞

記事を要約すると、安価なマンガンを電極に使い寿命を倍に延ばしたリチウムイオン電池の開発に日立製作所が成功した、ということだ。非常に短い記事だが太陽光発電の将来に大きな意味を持つ内容だ。

太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーによる発電は発電電力が一定にならない欠点がある。それを補う技術がスマートグリッドで、コンピュータ制御で電力をやり繰りする技術だ。そしてスマートグリッドの発展系が、地区や家庭ごとに蓄電池を持つ仕組みだ。太陽光発電の余剰電力はすべて電力網には流さずまずその蓄電池に溜める。それを、電力不足時に近隣でやり繰りするために使用するのだ。電力網全体で電力をやり繰りするのではなく、近隣単位でコンピュータ制御で電力をまずやり繰りし、それでも不足時は遠くの電力網からやり取りする、という技術だ。この技術に必要な構成要素が、安価で高性能な蓄電池だ。今回のマンガン電極で寿命の長いリチウムイオン電池はその条件を満たしている。このような製品が続々開発されることが予想される。そうなると、近隣などの小さな単位で電力をやり取りする技術がかなり現実味を帯びてくる。

東京電力のスマートグリッド対応戦略

2010年02月24日

朝日新聞サイトの2月24日記事「東電、スマートグリッドへの対応本格化-戦略チームで行程表」から一部を引用する。

東京電力はスマートグリッド(次世代電力網)構築への対応を本格化する。1月に立ち上げた「スマートグリッド戦略グループ」が中心となり、スマートグリッドに取り組むビジョン、行程の策定を開始。その一環で、電力系統への再生可能エネルギーの大量導入に備え、配電網全域に光ファイバー網を設けて系統安定を維持するシステム構築の検討も始めた。電力業界のリーダー役の東電が本腰を入れることで、産業界全体のスマートグリッドの取り組みも加速しそうだ。

同グループは技術や営業、企画など各部門から横断的に10人の人員を集めて構成。(1)再生可能エネルギーの導入拡大への技術的対策(2)電力品質の維持・向上(3)電気の効率使用―の三つのテーマについて、情報通信技術で対応していくことをスマートグリッドと定義して、東電が行うべき施策を整理、検討していく。

特に再生可能エネルギーの導入拡大への技術的対策と、電力品質の維持・向上では、家庭用の太陽光発電などの再生可能エネルギーが大量に系統電源に入り込むと、周波数や電圧が変動し、既存の配電網では制御しきれない問題の発生などが指摘されており、こうした課題への対策を急ぐ。

現在、電流を遮断する開閉器を6000ボルトの高圧配電線の随所に設置。低速電力線通信(PLC)を通して制御、配電事故の際に事故個所の特定と電流の遮断をしている。この開閉器に周波数と電圧を監視・調整する機能を持たせ、再生可能エネを大量導入しても、電力品質を保持するシステムを構想中。その際、低速PLCでは制御に必要な通信量が足りないため、光ファイバーを配電網すべてに張り巡らせることを検討している。 (C)朝日新聞

東京電力は、社内に「スマートグリッド戦略グループ」を立ち上げ、スマートグリッドに本格的に対応する体制を整えつつある。「スマートグリッド」という言葉には広義・狭義でいろいろな定義が可能な言葉だ。また国によりその定義が異なる場合もある。東京電力の「スマートグリッド」は次の定義だ。

次の3項目をIT技術で対応することを「スマートグリッド」と称する。
(1)再生可能エネルギーの導入拡大への技術的対策
(2)電力品質の維持・向上
(3)電気の効率使用

基本的に、太陽光発電システムからの大量の電力流入への対応がメインとなるようだ。この技術がどのようなものか、今回の引用記事で初めて知った。

現在、電流を遮断する開閉器を高圧配電線の各所に設け、電力線通信(PLC)により制御している。事故などの際にこれらが動作して問題箇所の遮断などを行っている。これをスマートグリッド対応にするため、この開閉器に電圧と周波数を監視する機能を持たせ、太陽光発電などの自然エネルギー電力の大量流入や停止があっても電力の品質を保つ仕組みとする。また、PLCでは通信に限界があるため、光ファイバーを配電網のすべてに敷設して高速通信を行う。

この東京電力のスマートグリッドはこのように送電網への対応がメインだ。他の定義のスマートグリッドのような、家庭内に蓄電した電力の利用はこの東京電力のスマートグリッド戦略には入っていないようだ。

スマートグリッドの規格を話し合うフォーラム

2010年01月24日

1月14日の朝日新聞サイト記事”次世代送電網「スマートグリッド」 企業横断の研究会”から一部を引用する。

太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用拡大に不可欠な次世代送電網「スマートグリッド」の実現を目指して、電力会社や電機メーカーなど二十数社が「スマートコミュニティ関連システムフォーラム」を設立した。国際的な開発競争で優位に立つための戦略を5月にもまとめる。
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フォーラムには経済産業省の呼びかけで、東京電力、日立製作所、トヨタ、パナソニック、NECなどが参加。効率的なシステムのあり方や、様々な機器をつなぐための規格などを検討。規格の国際標準化で主導権を握ることを目指す。(C)朝日新聞

このブログでも何回か取り上げた、スマートグリッドに関する話題だ。このスマートグリッドの実現を目指して関連会社が業種を超えた連携を図る「スマートコミュニティ関連システムフォーラム」を立ち上げた、という話題だ。このフォーラムの目的は、この記事によれば「効率的なシステムのあり方や、様々な機器をつなぐための規格などを検討」とあるが、さらに具体的なことが知りたい。

ネットを探すと、SankeiBizサイトの1月14日付記事「経産省 次世代送電網フォーラム 民間主導、国際規格めざす」にあった。以下、一部を引用する。

経済産業省は13日、エネルギーの需給調整をリアルタイムで行う次世代送電網「スマートグリッド(賢い送電網)」のあり方を話し合う、「スマートコミュニティ関連システムフォーラム」を立ち上げた。関連企業20社以上が参加し、蓄電池や家電など関係する規格と、その国際標準化について戦略を立てる。
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同フォーラムは、スマートグリッドを実現した社会(スマートコミュニティ)に不可欠な、蓄電池、電気自動車、双方向の通信機能で住宅への送配電をきめ細かく調整する次世代型電力計「スマートメーター」などのインフラについて、必要な要素を明確にし、相互に運用できる規格を検討する。

また、規格の国際標準化や、インフラを組み合わせた日本型システムの輸出、海外の関係機関との連携についても話し合う予定だ。

経産省で開かれた初会合には、東京電力などのエネルギー関連企業をはじめ、トヨタ、パナソニック、富士通、積水ハウスなど、業界の垣根を越えて24社が参加した。
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米国やEUが自国へ有利な規格の世界標準化を目指して活動を始めており、日本国内の体制を早急に整える必要がある。
...(C)SankeiBiz

なるほど、このフォーラムで話し合うことは次のとおりだ。
(1)蓄電池、電気自動車、双方向の通信機能で住宅への送配電をきめ細かく調整する次世代型電力計「スマートメーター」などのインフラについて、必要な要素を明確にし、相互に運用できる規格
(2)規格の国際標準化
(3)インフラを組み合わせた日本型システムの輸出
(4)海外の関係機関との連携
話し合う目玉は、(1)のスマートメーターだろう。これはインテリジェントな電力計で、CPUとソフトウェアを組み込み電力のきめ細かな調整を行うものだろう。

このスマートメーターの規格を早急に決め、この規格を世界で採用してもらうために海外で積極的に活動する、という流れになるだろう。

少し前まではスマートグリッドというと、マクロ的に地域毎に電力をやりとりする電力網の意味合いが強かったが、これは各家庭と他家庭や地域センターと相互に通信して電力を制御する、どちらかというとミクロ的な電力網だ。先のマクロ的なほうも日本では複数地域で実証実験が行われている。今日話題のミクロ的なスマートグリッドも、ITによる電力制御なので技術的には問題なく、規格さえ決めればすぐに開発し実証実験に移ることができるだろう。

 
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